彩薫散々

宇宙人との暮らし方

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「拙者、斎藤と同棲するでござる!」

「誰が同棲だ…阿呆が」

明治剣客浪漫譚署勤務の藤田警部補こと斎藤一と、神谷道場食客の昔は人斬りと呼ばれた緋村抜刀斎こと緋村剣心との同棲宣言が二日前になされた。

「さあ、今日も一緒にお主の家に帰るでござるよ♪」

剣心は嬉しそうに斎藤に語りかける。

「…何故貴様と暮らさにゃならんのだ…勝手に決めるな」
「さあさあ早く♪」

何らかんら言って仲がいいんだと皆は思ったので、あえて男同士でも何も言わなかった(ぇ)。

半ば強引に斎藤の家に転がり込む剣心。単身赴任のため、ほとんど殺風景な部屋だった。

「さて今夜のご飯は何にするでござるか?」

「だから貴様と一緒にはならんと言っている」
「ああ!ここにちょうどまだ材料が♪今夜は味噌汁にー、焼き魚にー、ほうれん草のおひたしが作れるでござるよ☆」

斎藤の言葉は剣心には全く届かない様子。

「……」

眉を顰めたまま斎藤は半分溜め息をつきながら、煙草に火をつけた。


台所から剣心の鼻歌が聞こえている。

「……」
斎藤は静かに煙草の火を消した。

「ん?斎藤どうしたでござるか?」

斎藤の気配を後ろに感じて振り返る剣心。

「あっ……っ…さ…い…んっ…」

剣心の口唇が塞がれた。
煙草の匂いが互いの舌に交ざる。

「ん…っ…」

その熱い口付けに、剣心は身動き出来ないまま溶けていった。

が、その時突然物凄い衝撃音と同時に部屋の天井をつきやぶってとてつもない物が頭上に落ちてきた。

「う…痛っ…」
さすがに落ちてきたものが普通は考えられない大きさのものだった為、剣心も斎藤もよける暇がなかった。

「あ…さ…斎藤っ…」

とっさに剣心をかばったのか、斎藤の意識がなかった。

「斎藤っ!!しっかりするでござる!!」

「……」

返答がない。剣心は真っ青になった。

すると落ちてきたものの方向から、ガラガラと何か割れる音がした。
「!?」

そこで初めて落ちてきた物が隕石である事がわかった。というのも当時では隕石だなんてわかるはずがないが、その辺は適当に(オイ)。

「な…何なんだ…」

剣心はゴクリと息を呑んだ。斎藤も心配だったが、何か気配も感じた為、そろりと逆刃刀を手にした。

ガラガラ…と岩を割って何かが出てきた。
「……」

剣心の剣気もあって一瞬緊迫した空気に包まれた。

「…くぁー~…よく寝たぜ~…んあ?ココ何処だ?o(・_・= ・_・)o キョロキョロ」

出てきたのは見た目も人間。しかも何処かで見た事あるような…

「さ…左之?」

剣心ははて?と思って目をこすって再度その人間らしきものを見た。
やはりあの左之助とそっくりだ。

「左之…お主どうして?」

「んあ?誰だよ…さのって?」

「え?…左之ではないでござるか?」

「てか、おめー誰だ…てかここどこなんだ」

「…じゃあお主は一体誰でござるか」

半信半疑で尋ねる剣心。

「…俺は第三星雲浪漫星からやって来た相良右之助っていうんだ。おめーは?」

「う…拙者は緋村…剣心でござる…」
「ふーん…ひむらけんしんか…てかここどこ?」
「江戸でござる」

「えど??あ!江戸か!!て事は地球だな!」

剣心には何が何だかさっぱりわからなかった。

「やっぱ道に迷ったのかー…くそー…設定間違ったか」

右之助というその者はそう言いながら、その岩をコンコンたたいて何かを確かめていた。
グワっ!!ガラガラ
「あ!?しまった…つい拳使っちまった…」

「…あ、あの…すまぬが…拙者、お主の言ってる事がよく理解出来ぬでござるが…見た感じ…それはとっくに潰れていると思うでござる」
「何ぃ?!マジかよ!!」

ガックリ項垂れる右之助。
「あー…腹減ったなー」
何気に剣心を見て目で何か訴える右之助。

「…オイ…」

戸惑ってる剣心の後ろから声がした。

「あ…さ、斎藤!大丈夫でござるか?!」

その目を疑うような現実の光景に、斎藤はあくまで冷静に言った。

「大丈夫もくそも…あの野郎何者だ…顔を見ていると腹が立ってくるんだが」

「でもあれは左之助ではないでござる…宇宙人でござる」

「……どっちみち鬱陶しいには違いないから…消すか…」
「え…でも悪い者には見えないでござる」

「だがあの面は阿呆に違いない」
「さ、斎藤…」
暫し押し問答が続いた後、右之助がツカツカと二人のそばにやって来た。

「とりあえず飯くれ」
「おろ~…」

「貴様にやるような飯は無い。死にたくなければとっとと失せろ」
「あん?死ぬ?冗談じゃねえよ、それはこっちの台詞だ」

「…フッ…死にたいらしいな…」

斎藤がニヤリと微笑した。

「斎藤…やめるでござる…」

抑えようとする剣心。

「邪魔するな、抜刀斎」

「…拙者の前で殺生は許さぬでござるよ、斎藤。ていうかお主と拙者は同棲夫婦なんだから♪」

「…は?それは関係ないだろう」

「関係なくはないでござるよ!拙者を置いて死んではならぬ!」

「…だから、元々貴様と俺は関係も何もないだろう」

なぜか夫婦喧嘩勃発(オイ)。

「あん?おめーら夫婦なのか?」
「そーでござる」
「勝手に決めるな」
夫婦の漫才喧嘩を眺めながら右之助はひょいっと半分ボロボロの台所へ。

「んじゃ、この隙に飯頂きー♪」
辛うじて無事だった味噌汁を発見してそれに食らいつこうとした瞬間。

「オイ」

グイっと引き戻された。

「あっ…飯っ」
「誰が勝手に食っていいと言った」
「そうでござる…拙者が斎藤のために作った愛の味噌汁なのに」

「な…なんだよ…急に二人して…」

と言ってる間に右之助はボコボコにされた。

あの二人にかかっては…勝てるはずもなく。




――――――――

「…さあさあ召し上がれー」

剣心は嬉しそうに料理を持ってきた。

「…オイ…」

機嫌の悪そうな声がした。

「…何でござるか?斎藤」

「…これは何の真似だ…」

「右之助も食べるでござるよー」

「おう母ちゃん!うまそーだぜ」

「…何故コイツがいるんだ…」

「何故って、拙者達の子供でござるよ?」

「こんなガキは要らん…」

「ひでーなー親父ー」

「親父と言うな…殺すぞ」

「まあまあ…右之助は今のところ帰る方法が無いんだから、仕方ないでござるよ、斎藤」

「貴様らはおめでたい同士だな…やってられん」

「そう言わずに仲良くやろーぜ?な、親父」

「親父と言うな!」

そんな一家団欒風景を剣心は微笑みながら見つめていた。



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「ん?あれ?」

次の朝剣心は目が覚めてあたりを見渡した。

「あれ?右之助?」

まるで何もなかったかなようないつもの斎藤の部屋だった。

「あれは夢だった?」

剣心は横で寝ている斎藤を揺さぶった。

「斎藤、斎藤!右之助がいないでござる!」

「いないならいないで結構…」

無愛想に口だけ返す斎藤。

あれは幻ではなかった。確かにいたのだ。斎藤もそう証言している。

「…もしかしたら…拙者達の…将来の子供だったりして」

「んなわけないだろうが…阿呆…あってたまるか」

「またまた…ホントはああいうのが好きなんでござろう?」

「というか…貴様がここにいる自体もおかしいんだよ…」
左之助とそっくりな宇宙人右之助は一体何処へ行ったのか…それは読者の想像にまかせる事にしよう…((°Д°)ハァ?)

―完―