彩薫散々

剣心の瞳は100万ボルト

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事件はいきなり起こった…。

「あれ?斎藤さんはどこへ?」

明治剣客浪漫譚署勤務の沖田警部補は、同僚である斎藤警部補の所在が不明である事に気付いた。

「さあ…確か見回りに行かれたままかと…」

新人警官がそう答えた。

「…そうですか…にしては遅いですね…」

沖田は少し胸騒ぎがしていた。
あの泣く子も黙る任務はしっかり、きっちりなあの斎藤さんが、まだ帰ってないなんて…
何か事件に巻き込まれたんでは?!

「ちょっと見てきます」

沖田はそう言うと、風のごとく署から出て行った。


そう時間は経たなかった。
すぐに人だまりが目に入り、少々騒ぎになっていた。

「どうしたんですか?」

と騒ぎの中に入るや、沖田の目に入ったのは…

「さ…斎藤さん!!?」

驚いた。信じられない光景だった。
めったな事ではこんな光景は見られない…あの斎藤さんが倒れてるなんて!!

「とか思ってる場合じゃないな…斎藤さん!!しっかりして下さい!!大丈夫ですか?!」

どうやら意識がないようだ…。

周りに事情を聞くところによると、何やらおかしな男が電柱に上っていて、それを斎藤が阻止しようと上っていたら、電線にふれてもいないのに感電し、そのまま落下したらしい。

「で、その男はその後どうしたんですか?」

その男はそのまま電線をサーカスのようにつたい、足早に去ったという。
「どんな風貌でしたか?」

聞いて驚いた…。赤い髪に左頬に十字傷…。まさか…

とりあえず斎藤を診療所へ送還し、すぐさまその男を追うべく、沖田は捜索を始めた。

「やっぱり此処にいましたか…」

沖田の勘は鋭い。斎藤以上に。いや、斎藤とあの男に関わる事になると…が正しい。

「また会いましたね…緋村さん」

「おろ?!沖田殿、どうして此処がわかったでござるか?」

かつて幕末の頃、人斬り抜刀斎という名で恐れられた男…赤い髪に左頬の十字傷…
今は緋村剣心という名の…

「あなたの事は僕にはわかるんですよ」

沖田に剣気が…いや殺気が走る…

「沖田殿…」

剣心もその殺気を感じ身構えた。

「…僕が何を言おうとしてるか…おわかりですよね?」

「…斎藤の事でござろう?」

緊迫した空気の中、二人の剣気が交差する…。

「…さすがは緋村さん…じゃあ話は早いですよね?」

「…」

「いきますよ?」

「…了解でござる」

そう言うと同時に二人の姿が消える。

常人には見えるわけがない。刀がぶつかる音だけが火花となって見えるだけ…。

「…なかなかやりますね?」

「そっちこそ」

だが、次の瞬間沖田はその威力に愕然とする…。

「飛天御剣流…」
「!!」

一瞬だった。何が起こったかわからないくらい…。
わかるのは身体に流れた電流のようなしびれた感覚。

「こ…これはいったい…」

「龍電閃でござるよ」

剣心が不敵の笑みを浮かべてそう呟いた。

「こ…これが…。では斎藤さんのも…」

「そうでござる…今のはその半分もない程度」

「…すごい…でもそのままな技名ですね…」

「…余裕でござるな…沖田殿。次はお主も斎藤と同じになる」

余裕で勝気な剣心…。

「それはどうかな…今日の僕はいつもと違いますよ?」

そう言う瞬間に沖田の姿が消えた。

「何!?」

そう言ってる瞬間に、剣心の背後から沖田が迫った。

「遅いですよ?緋村さん」

「えっ…」

一瞬稲妻のごとく眩しい閃光に包まれた。

「くっ…痺れて視界が…」
剣心はよろめいた。

「…どうです?あなたと同じ電流技…しかも縮地バージョン」

「拙者の技を盗んだでござるか?!…しかも縮地はお主の技ではないでござるよ!!」

「それはお互い様ですよ…緋村さん…あなたの技も人間技じゃないですし」

「バレていたでござるか…目から出ていた事が」

「…伊達にあの触覚アンテナ斎藤さんと一緒にいてませんからね」

「…さすがでござるな…」

二人は息を呑んだ。

「でもまだこれからが本番ですよ…緋村さん」

「え…」

「…僕だってかつては新撰組一番隊組長なんですよ…。僕の大事な斎藤さんをあんな目にあわせた罰を受けてもらいます」
沖田の殺気が更に増し、再び縮地で姿が消えた。

「おろ…何か違うような…って、それは宗次郎の…」

そんな事を言ってる間に、剣心は撃沈された。



―――――診療所に二名送還されていた。

「…なぜ貴様が此処にいる…抜刀斎」

事件の被害者斎藤は、気だるそうにそう言った。

「…沖田殿に聞いてくれでござる」

「…沖田君に?沖田君は持病の悪化で休養と聞いていたが…」

「…沖田殿は最強でござる…いや最恐」

「?…」


剣心の瞳は100万ボルト…じゃなく、沖田の剣心への復讐が100万ボルトであった…。

―完―